2011年12月25日
FX決定の背景
公開された米ロッキード・マーチンF35戦闘機のタッチパネル式コックピットのデモ機
自国の政府を
まったく信用できない
悲しさ・・・・・
じゃあな
新聞では読めないFX決定の背景
【YOMIURI ONLINE 2011年12月21日】調査研究本部主任研究員 勝股秀通
「中国とロシアがステルス機を開発しており、対抗するにはステルス性の高い戦闘機を持つことが不可欠」――。防衛省と航空自衛隊は次期戦闘機(FX)でF35を選定した理由をそう説明する。
だが、レーダーに映りにくいステルス機に対抗するには、地上のレーダーと上空からの赤外線センサーなどを組み合わせた高度な防空システムを構築し、早期にステルス機の侵入を探知、迎撃することが何より重要だ。ステルス機を撃ち落とすにはステルス機が絶対に必要というわけではない。それは空自の中では常識でもある。
ではなぜ、そんな的はずれな説明までして、FXを米ロッキード・マーチン社(ロ社)が中心となって開発するF35Aライトニングに決めたのか――。それは今の航空自衛隊にとって、米空軍との連携や連帯感を、これ以上弱体化させてはならないという強い危機感があったからだ。性能比較や価格など総合的に機種を選定すると言い続けてきた以上、米空軍との連携強化や日米同盟のためとは言えなかったのだろう。
少し時計の針を戻してみよう。FXの選定が事実上始まっていた2008~09年、防衛省は世界最強の戦闘機とされる米国ロ社製のF22ラプターを本命視してきた。当時の航空幕僚長は記者会見で「ノドから手が出ている」と言い、浜田靖一防衛相や空自幹部らは、何度も訪米しては日本への供与を要請し続けていた。
だが、米国の反応は冷たく、米議会は早々に高度な軍事技術の輸出禁止を決め、しかも「空自に供与するのなら、イスラエル空軍の方が先だ」といった発言まで聞こえてきた。
1980年代半ば、海上自衛隊が米海軍に門外不出のイージス艦の供与を求めた時とは大違いだ。軍事技術の塊だったイージス艦について、米議会は日本への供与に強く反対した。その反対を押し切ってまで海自への供与が実現したのは、「米空母が日本周辺で行動する際、海自のイージス艦も艦隊護衛の一翼を担う」という米海軍の説明があったからだ。つまり、米海軍と海自の間には一緒に戦うという強い信頼と結束があったのだ。
それに引き換え、80年代の空自は、年に15回前後も日米共同訓練を実施していたが、今では年1~2回にまで激減している。冷戦後、湾岸戦争(1991年)のような多国籍軍や有志連合(Coalition)が軍事行動の主流となり、共に汗を流すこともなく、せいぜい後方支援の輸送でしか参加できない空自を強くすることなど、米軍の戦略にとって必須の条件ではなくなってしまったからだ。95年には、米空軍が同盟国と実施しているF15戦闘機の戦技研究の場から空自パイロットは閉め出されてしまった。
しかも、日本を標的とする北朝鮮の弾道ミサイルに対し、ミサイルの発射基地攻撃が現実味を帯び始めながらも、国内では「最も危険な攻撃は米空軍、防空は空自」という意見が大勢で、空自幹部は「米空軍の幹部から『これからも空自と一緒に戦うことはないだろう』とまで皮肉られた」と明かす。
さらに、ここにきて米軍は、中国の脅威に対抗するため「エア・シー・バトル構想 Air-Sea Battle concept」を戦略の柱に掲げた。構想は煮詰まっていないが、米軍は中国の脅威が及ばない地域までいったん退き、その後、遠方から海空戦力によって反撃するという考え方とみられ、防衛省幹部は「中国の出方次第では、米軍は日本から退く可能性がある」と危機感を強めている。
FXは、米海軍が使用するFA18、欧州が共同開発したユーロファイター・タイフーンの2機種も候補となった。単純な性能比較であれば、「F35が優位なのはステルス性だけ」(空自幹部)であり、高速飛行能力と運動性能に勝るタイフーンに軍配が上がる可能性もあった。だが、このまま空自と米空軍との関係の希薄さが続けば、〈日本を守れない〉という意識が選定の最大要因となったことだけは確かだ。
もちろん、民主党の鳩山政権が沖縄問題を含めて米国との関係を軽視し、対米関係を戦後最悪に近い状況にまで陥らせてしまったことも、選定に大きな影響を与えている。しかし、こうした様々な状況の中で、F35は米空軍の次期主力戦闘機であり、それ以外の機種を選ぶ選択肢は、防衛省と航空自衛隊にはなかったのだ。
自国の政府を
まったく信用できない
悲しさ・・・・・
じゃあな
新聞では読めないFX決定の背景
【YOMIURI ONLINE 2011年12月21日】調査研究本部主任研究員 勝股秀通
「中国とロシアがステルス機を開発しており、対抗するにはステルス性の高い戦闘機を持つことが不可欠」――。防衛省と航空自衛隊は次期戦闘機(FX)でF35を選定した理由をそう説明する。
だが、レーダーに映りにくいステルス機に対抗するには、地上のレーダーと上空からの赤外線センサーなどを組み合わせた高度な防空システムを構築し、早期にステルス機の侵入を探知、迎撃することが何より重要だ。ステルス機を撃ち落とすにはステルス機が絶対に必要というわけではない。それは空自の中では常識でもある。
ではなぜ、そんな的はずれな説明までして、FXを米ロッキード・マーチン社(ロ社)が中心となって開発するF35Aライトニングに決めたのか――。それは今の航空自衛隊にとって、米空軍との連携や連帯感を、これ以上弱体化させてはならないという強い危機感があったからだ。性能比較や価格など総合的に機種を選定すると言い続けてきた以上、米空軍との連携強化や日米同盟のためとは言えなかったのだろう。
少し時計の針を戻してみよう。FXの選定が事実上始まっていた2008~09年、防衛省は世界最強の戦闘機とされる米国ロ社製のF22ラプターを本命視してきた。当時の航空幕僚長は記者会見で「ノドから手が出ている」と言い、浜田靖一防衛相や空自幹部らは、何度も訪米しては日本への供与を要請し続けていた。
だが、米国の反応は冷たく、米議会は早々に高度な軍事技術の輸出禁止を決め、しかも「空自に供与するのなら、イスラエル空軍の方が先だ」といった発言まで聞こえてきた。
1980年代半ば、海上自衛隊が米海軍に門外不出のイージス艦の供与を求めた時とは大違いだ。軍事技術の塊だったイージス艦について、米議会は日本への供与に強く反対した。その反対を押し切ってまで海自への供与が実現したのは、「米空母が日本周辺で行動する際、海自のイージス艦も艦隊護衛の一翼を担う」という米海軍の説明があったからだ。つまり、米海軍と海自の間には一緒に戦うという強い信頼と結束があったのだ。
それに引き換え、80年代の空自は、年に15回前後も日米共同訓練を実施していたが、今では年1~2回にまで激減している。冷戦後、湾岸戦争(1991年)のような多国籍軍や有志連合(Coalition)が軍事行動の主流となり、共に汗を流すこともなく、せいぜい後方支援の輸送でしか参加できない空自を強くすることなど、米軍の戦略にとって必須の条件ではなくなってしまったからだ。95年には、米空軍が同盟国と実施しているF15戦闘機の戦技研究の場から空自パイロットは閉め出されてしまった。
しかも、日本を標的とする北朝鮮の弾道ミサイルに対し、ミサイルの発射基地攻撃が現実味を帯び始めながらも、国内では「最も危険な攻撃は米空軍、防空は空自」という意見が大勢で、空自幹部は「米空軍の幹部から『これからも空自と一緒に戦うことはないだろう』とまで皮肉られた」と明かす。
さらに、ここにきて米軍は、中国の脅威に対抗するため「エア・シー・バトル構想 Air-Sea Battle concept」を戦略の柱に掲げた。構想は煮詰まっていないが、米軍は中国の脅威が及ばない地域までいったん退き、その後、遠方から海空戦力によって反撃するという考え方とみられ、防衛省幹部は「中国の出方次第では、米軍は日本から退く可能性がある」と危機感を強めている。
FXは、米海軍が使用するFA18、欧州が共同開発したユーロファイター・タイフーンの2機種も候補となった。単純な性能比較であれば、「F35が優位なのはステルス性だけ」(空自幹部)であり、高速飛行能力と運動性能に勝るタイフーンに軍配が上がる可能性もあった。だが、このまま空自と米空軍との関係の希薄さが続けば、〈日本を守れない〉という意識が選定の最大要因となったことだけは確かだ。
もちろん、民主党の鳩山政権が沖縄問題を含めて米国との関係を軽視し、対米関係を戦後最悪に近い状況にまで陥らせてしまったことも、選定に大きな影響を与えている。しかし、こうした様々な状況の中で、F35は米空軍の次期主力戦闘機であり、それ以外の機種を選ぶ選択肢は、防衛省と航空自衛隊にはなかったのだ。
Posted by 『にっしゃん』 at 08:17│Comments(0)
│軍事
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