2016年09月09日
「教科書謝礼問題」における公正取引委員会の調査結果について
一般質問、終了致しました。
質問内容を全文掲載致します。
答弁については、後日になります。
長いので恐縮ですが、宜しければ御一読下さい。
m(__)m
平成28年 第4回加古川市議会(定例会) 一般質問
「教科書謝礼問題」における公正取引委員会の調査結果について
質問主旨
平成18年に教育基本法が、実に59年ぶりに改正され、新しい時代に生きる子供達へ、新しい教育目標が定まり、平成19年には学校教育法の改正、その後、平成20年に学習指導要領が公示され、さらに教科用図書検定基準も大きく改訂されました。特筆すべき点は、「豊かな情操と道徳心を培う」「自律の精神を養う」「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う」等であります。
日本の子供達が、これからの人生、自分の育った国や郷土を愛する心をはぐくみ、日本人でよかった、加古川市に暮してよかったと、地域や国や御先祖様方への感謝の念や誇り、今ここに自分が生きているという事に対し、嬉しいという思い、つまり「自己肯定感」を持って生きて行けるようにする事は、子供達の未来、加古川市、日本の未来を考えると、大変重要な事だと思います。
日本の未来を支える次の世代が、どのように育ってほしいか、新しい方針が国から定められ、さらに各地方自治体にも「目標設定」の徹底が言い渡されました。
その内容を抜粋致しますと、教育基本法改訂におきましては、旧法にありました前文の「平和」と「普遍的」、「個性」というキーワードから、新法におきましては「正義」「公共の精神」「生命尊重」「伝統と文化を尊重」「我が国と郷土を愛する」という、今まで入っていなかったキーワードに置き換えられ、さらに、「国家及び社会の形成者としての資質を養う事を目的としておこなわれるものとする」としています。また学習指導要領も、総則に、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し」と新たに規定をしました。戦後70年経ってみて、教科書採択における教育基本法及び学習指導要領の改訂ポイントは、「道徳心」をはぐくみ、「伝統と文化」や、「国や郷土を愛する心」を持ち、生命の尊厳をもつ子供達を育成する事と言えるでしょう。
どうしてそうなったのか背景がわかるいくつかの意識調査がありますので、御紹介したいと思います。
まず、平成12年電通総研が行った世界価値観調査において、74カ国でおこなった意識調査によると、「自国に誇りを持っているか」という問いに対し、「持っている」と答えた人の割合が、1位はエジプトで99.1%、米国は15位で94.1%韓国は55位で78.3%、中国は56位で78.0%、日本はどうなのかと言うとなんと、54.2%で74カ国中71番目という低さであります。
イギリスのエコノミスト誌による同様の調査発表でも、世界33カ国中で1位はオーストラリアで、最下位33位が日本であり、内閣府の「今を生きる若者の意識調査」でも、「自分自身に満足している」「自分には長所がある」「うまくいくかどうかわからないことにも積極的に取り組む」等の「自己肯定感」をテーマにした問には、先進7ヶ国中最下位、逆に「自分をダメな人間だと感じる」「つまらない、やる気が出ないと感じたこと」「ゆううつだと感じたこと」等の「否定感」をテーマにした問には1位という結果で、日本の若者は、「自己肯定感」を持った者が他国に比べて少なく、「否定感」を持った者が多いという結果がでました。つまり、世界及び内閣府の調査などで、日本人の大人も子供も、世界でも圧倒的に、「自分の国に誇りを持っていない」という状況であるとのデータがでたわけです。
教科書採択の方針が、日本の「伝統と文化を尊重してください」と何度も言っているのは、未来を託す子供達の頭の中を、自分の国の良いところと悪いところ、どちらの比重を、多く育てたいかが問われているのだと思います。
子育てをする時、私も、父や母、祖父母からも習いましたが、子供の「自己肯定感」を育む一番の方法は、まずその子供の存在を認め、良いところを見出し、出来た事を褒める。そうすると、子供は自信がでてきて、安定して、自立心も育っていくものだと思います。また、逆に、子供を認めず、悪いところばかりを見出して、常に過去の悪い点や、失敗した事を責め続けると子供はどうなるか。褒める事よりも、責める事を多くした場合、子供は、存在を否定されたことになり、自虐的になり、無気力になり、伸びやかに育たず、本来持って生まれた力を発揮できないものです。
それは、自分の生まれた国家や地域に対しても言えるのではないでしょうか。
また、その人間の歴史観というものは、思想や思考のベースになるものです。それ故、歴史や公民の教科書でも、自分の国と故郷に愛着を持つ教育へと舵取りがされたのだと思います。
どの国の歴史にも、過去、様々な出来事があります。また、戦後明らかになった新しい史実をタイムリーに反映しなければ、正しい歴史を学ぶことはできません。GHQによる東京裁判によって線を引かれた、昭和20年8月現在の情報を基にした自虐的な歴史観では、明るい未来を築いて行くことは、決して出来ないと思います。
今、国の考える、日本の未来を担う日本人の子供の教育として必要とされているのは、子供達一人ひとりが自分自身の存在に自信を持ち、健全に国の発展に寄与しようと思う人材を育成することです。生まれ育った地域、加古川の為に何か役に立つ事をしよう!人の喜ぶ事をしよう!子供達に、自分や自国や御先祖様方に自信や誇りを持って生きてほしいと、新教育基本法、新学校基本法、新学習指導要領に最も則った教科書を選んでほしいという思いから、21年にも改めて学習指導要領が改訂されたという事かと認識し、私も、保護者の一人として、納得した所であります。
今般、教科書出版会社が『編集会議』と称して教育関係者(校長・教頭・教諭)を招待し、ホテル等で飲食接待をして、本来見せてはいけないはずの検定中の教科書(いわゆる白表紙本)を見せて参加者から意見を聴き、帰りには謝礼(現金・図書券)・交通費などを渡し、更には御中元・御歳暮を贈っていた「教科書謝礼問題」について、公正取引委員会が調査に乗り出し、教科書出版会社9社に対して、本年7月
6日付で「警告処分」を行いました。白か黒かの調査に対して、黒という結果が出さ
れたわけであります。
公正取引委員会は、本年4月から調査を開始し、同委員会の調査は平均で1年余りかかるのが通常の所、今回は約3ヶ月と異例のスピードで結論が出されました。同委員会の事務総長は、「一刻も早く現状を是正させ公正な営業を回復させる為」と説明されました。また、「検定申請後の現金などの供与は、教科書選定を勧誘するものだった可能性が高い。不当な利益を相手に提供して、自己と取引することを禁じた『不当な顧客勧誘』にあたる恐れがあると認定し、1社だけなら『排除措置命令』の可能性もあった。次は法的拘束力のある『排除措置命令』を出す。教科書選定関係者への金品提供などを禁じた教科書協会の自主ルールが機能していなかったと断定し、もっと実効性のあるルールに改めるべきだ」と警告しています。しかも、長きに亘り常態化し、慣習的に行われていたことも明らかになっています。
本件に関しては、全国で延べ5,147名が閲覧をして3,996名が謝礼を受け取り、兵庫県内では、延べ149名が『編集会議』に参加し、その内102名が謝礼を受け取った事が判明しています。加古川市においては、5名が3,000~20,000円の謝礼を受け取り、「説諭処分」になったとのことであります。
過去の採択結果を紐解きますと、長年、同じ教科書出版会社の教科書が採択されていて、かなりの長期に亘って、不当な営業による採択が行われて来たのではないかという疑念を抱かざるをえませんし、未来を担う大切な子供達に顔向けできるのか。正しきを教えるべき教育関係の現場で、潤沢な資金力を背景にした不当な営業によって、教科書の採択をゆがめる不正がまかり通っていたことを非常に残念に思います。
教科書業界はもちろん、教員の倫理観も疑われる。教育界全体の信頼を損ないかねない重大な問題だと思いますし、事後の処分についても、一般の市民感覚とはおよそかけ離れた処分で、氏名も役職も「オープン」にはされていませんし、今回の公正取引委員会による調査結果および処分について、教育委員会においても一切議論されていません。再発防止に対する熱意が感じられないというのが率直な感想です。
今般の公正取引委員会の調査結果および処分について、質問させていただきたいと思いますので、宜しく御願い申し上げます。
大項目 「教科書謝礼問題」における公正取引委員会の調査結果について
小項目(1)本市の小中学校における採択教科書の科目別の出版会社名について
小項目(2)本市の小中学校における採択教科書の出版会社の内、今回「警告処分」を受けた出版会社名について
小項目(3)不当な営業活動を行っていた出版会社の教科書を、本市の子供達に使い続けさせることについて
要 旨 3月の定例会において、他の業種・業界の企業が同様の事を行った場合どのような事になるか、質問させていただきましたが、前例から推察しますと例えば建設業の場合、当該落札物件は「取り消し処分」、また、相当期間の「指名停止処分」、場合によっては、「営業停止処分」等が考えられますが、今回の場合そのまま使い続けるということに対して、どのように御考えか御見解を御伺い致します。
小項目(4)調査員、地区採択協議会委員および教育委員会委員の方々への対応について
要 旨 「責任ある採択」を行うべき、調査員、地区採択協議会委員および教育委員会委員の方々が、今回の公正取引委員会による調査結果および処分について、どの様に感じられ、どの様に考えられているのか、非常に知りたいところですが、今回の一連の事案をそれぞれの方々に御知らせしたのかどうか、御伺い致します。
小項目(5)不当な営業が、長期に亘り慣習化していた事について
要 旨 不当な営業が長きに亘り常態化し、慣習的に行われていたことを、我々は知っていました。だからこそ、今までいろいろと質問させていただいてきたのですが、教育委員会の皆さんは、知っておられたのかどうか、御伺い致します。
小項目(6)採択の公平性の確保(再発防止)について
要 旨 教育委員会は、今般の事例により抱かれた、市民・国民の疑念を晴らす責務があると思います。次回の採択は小学校が平成30年、中学校が平成31年になるかと思いますが、3年4年経過
しますと、事件は風化し、忘れてしまう方々もいらっしゃると思いますが、次回の採択時に、今回の「事件」および「警告処分」を受けた出版会社名を紹介し、再度、調査員、地区採択協議会委員および教育委員会委員の方々に御知らせする御考えは、あるのかないのか御伺い致します。
公正取引委員会事務総長は、「1社だけなら一罰百戒で『排除措置命令』にしたかもしれないが、9社もやっていた。処分を目指して時間をかけるよりも、短期集中で再発防止や業界全体への改善の働きかけを目的とし、警告にした」としています。その1社がどこなのかは判りませんが、最も多く大規模に行っていたのは「東京書籍」で、ばら撒いた金額も群を抜いています。ある意味で「主犯格」といえると思いますが、「赤信号、みんなで渡れば・・・」ではないですけれども、まさにその通りの出来事であります。その出版会社の教科書を使い続ける事に対して、加古川市教育委員会の御気持ちの部分を、再度、御伺い致します。
責任ある採択をすべき、調査員、地区採択協議会委員および教育委員会委員の方々には、当然、御知らせすべきだと思いますし、結果、不当な営業活動をしていた出版会社の教科書を採択したことに対して、どのように考えられているのか市民の皆さんに御知らせする必要があると思いますが、処分の発表後、2回の定例教育委員会が開催されているにも関わらず、一度も議題になっていません。臨時会を緊急に開いてもいいくらいの出来事だと思いますが、如何でしょうか。
公正取引委員会が調査に乗り出し、「警告処分」にしたという事と、また、つい先日の9月5日に報じられたところでありますが、文部科学省は、今後、同様の行為があった場合、その会社の検定申請を認めない新制度を設ける方針を固め、さらには不正行為が判明した場合に、採択をやり直せる制度も新設しています。この事の重大さをどの様に認識しているのか、再発防止に最大限の努力をされるべきであると思います。
今回の事案で最も許し難く感じるのは、子供達が使う教科書に採択以前の段階で不正が行われていたことです。そしてその教科書を小学校では今後3年、中学校では今後4年に渡って、使い続けなければならないということです。本市の小学校では3教科、中学校では10教科が、今回問題を起こした教科書会社が発行したものが採択されました。それらを手にするたびに、何だか子供達の手が汚れるような気がしてなりません。本当に耐えがたく思います。今後二度と、このような問題が起きてはならないと思います。
「オープン」という言葉が大切にされ、教科書採択に対する市民との信頼関係が築かれます様に、御祈り申し上げまして、終わります。ありがとうございました。