2010年02月18日
中国が「制空権」を確立する日

最新鋭の第五世代ステルス戦闘機『殲14』
毎月、産経新聞に掲載される野口裕之氏の【安全保障読本】が楽しみにしている
マスコミ界で野口裕之氏ほどの知識をもつ記者はいない
じゃあな

野口裕之の【安全保障読本】(37)
中国が「制空権」を確立する日
「制空権を失った国家はそれを奪還できない。航空機産業を爆撃で破壊され、ほぼ同時に陸海軍の動員・維持手段も失っているからだ。その国家は戦争継続意志すら無くしてしまう」
第二次大戦において「戦略爆撃」など各国の航空戦力運用に大きな影響を与えたイタリア陸軍のジュリオ・ドゥーエ少将(1869~1930年)の戦略思想である。制空権獲得には敵の航空機や空母、基地の滑走路・格納庫・弾薬庫に加えレーダー・管制施設や防空拠点-などの破壊が前提となる。ドゥーエの思想には批判も多いが、「大陸間弾道弾出現で思想が実現した」「湾岸戦争で正しさが証明された」など評価も少なくない。
ただし、航続距離や燃料補給における航空戦力の限界、兵器の進化・多様化により空域を完全支配することは不可能で、制空権を現代では「航空優勢」と呼ぶ。ところが「制空権」を確立し得る軍事大国が将来、誕生するやもしれない。中国である。
「最新鋭機を開発」
中国空軍の何為栄・副司令官は昨年11月、最新鋭=第5世代戦闘機の国産開発を明らかにした上で「8~10年後の実戦配備」を宣言した。レーダーに捕捉されにくいステルス機能を持つ第5世代戦闘機の研究・開発は1990年代から観測され「殲14」と呼称されてきたが、軍高官による明言は初めてだった。
かつて制空権は爆撃機により達成されたが、今日ではステルス機が主役。日米軍事筋によると「殲14」は機体制御システムと推力偏向ノズル付きエンジンにより、空中戦で超機動性を有する。レーダーは対空・対地・対艦のマルチモード型で捜索・追跡距離も長く、同時に多数目標を追跡・攻撃できる-という。
副司令官の宣言から2週間後、中国とパキスタンが共同出資した中国技術による軽戦闘機「梟竜(きようりゆう)」の第1号機完成式典が開かれた。パキスタンは、ロシアに加え欧米から第5世代機の売り込みを打診されているインドと対(たい)峙(じ)する。そのパキスタンのギラニ首相が「わが国空軍のニーズを満たす戦闘機を設計してくれた」と絶賛した技術力も考慮の必要がある。梟竜は空中戦能力において米軍のF16戦闘機に匹敵(対地攻撃能力は劣る)する-との西側分析もある。もっとも、中国空軍は、既にF16に伍(ご)する第4世代戦闘機「殲10」を、既に配備している。
「質」の向上だけではない。経済の急速発展に加え、社会保障を遅らせても軍事を優先させる一党独裁国家の特性をフル活用し、「量」もすさまじい。作戦機は3000機に迫る。それに比し、自衛隊は400機を超える程度。主力のF15など質の高い戦闘機と操縦者の技量は頼もしいが、F15も今や前世代戦闘機になろうとしている。過去8年間で2600億円も減額されてきた防衛費は、来年度も減額される可能性が高い。いかに質でカバーしようとも「矢弾」が少なくては守りようがない。
ハトの耳に念仏?
中国空軍にとって昨年は、航空機技術の「開眼」年であった。研究開発から製造までを手掛けた200トン級大型軍用輸送機が完成した。戦略輸送を可能ならしめるだけではない。プラットホームを転用できる空中給油機や、電子偵察機、早期警戒機といった「制空権」確立に不可欠な支援態勢を、独力で保持できる第一歩を築いたのだ。輸送機を手掛けた中国航空工業集団公司は、米経済誌フォーチュンが発表した世界企業番付で426位に入った。中国軍需企業がランクインしたのは初めてで航空宇宙・軍需部門では11位に躍り出た。
「21世紀は空の時代。無限の空域を制すれば陸上・海洋・電磁領域において戦略的主導権を掌握できる」
中国空軍の許其亮・司令官は、「制空権」確立は「資源=海上交通路」の独占確保や台湾独立を実力阻止するに必要な「海洋覇権」にも不可欠だ―との戦略観を示唆している。司令官は「国土防衛型」から「攻守兼備型」へ脱皮し、それに伴う空軍力の底上げを明言。「空と宇宙での軍事競争は不可避で歴史的必然だ」とまで言い切った。
かくも不気味な軍事拡大戦略をひた走る中国に対し、民主党は「中国は現実的脅威ではない」としている。安全保障の危機を認識しようとしない鳩山由紀夫首相は外務・防衛省内でこう呼ばれている。
「ハトの耳に念仏」
【国際】 「価格は米国のF16戦闘機の3分の1程度」 ~中国の兵器ビジネス、主力は新型戦闘機「梟竜」…1500機輸出へ
(2009年3月11日18時44分 読売新聞)
【北京=佐伯聡士】中国は、国産の新型軽戦闘機「梟竜(きょうりゅう)」(パキスタン名・JF17)42機をパキスタンに売却し、 同国と共同生産を進める契約に調印した。
同国軍は、将来的に計250機まで増やす計画で、世界にも1500機が輸出される見通しだ。 地対空ミサイルなどと合わせて、中国のアジア、アフリカ、中東向け兵器ビジネスの主力となりそうだ。
中国の国際問題専門紙「環球時報」によると、3月7日にイスラマバードで調印された契約額は10億ドル(1000億円弱)で、中国の兵器輸出では過去最高額。パキスタンは、中国の銀行からの借款で購入し、分割返済するという。
梟竜は、1992年から中パの共同開発が始まり、2003年8月に初飛行に成功、量産態勢の準備が着々と進んでいた。
中国は1970年代から戦闘機の輸出に乗り出し、これまで、パキスタンやエジプト、バングラデシュ、ナイジェリア、ナミビアなどアジア、アフリカ、中東諸国を中心に、「殲7」戦闘機を600機以上輸出してきたとされる。
こうした国はいずれも後継機を必要としており、今後、梟竜の主な輸出先となる可能性が高い。 価格は米国のF16戦闘機の3分の1程度という。
同紙は、パキスタンの軍事分析筋の予測として、将来的に輸出される1500機のうち、
北朝鮮がパキスタンに次いで多い200機を購入すると伝えている。パキスタンでは、梟竜の量産に着手するほか、来年には中国から空中警戒管制機も購入する計画という。